top of page

冷やす?温める?
専門家が教える最新の考え方

「とりあえず冷やす」はもう古い?

当院では『深層筋温熱療法』という温める治療をメインにしていることから、患者さんからもよくされる質問として、『冷やした方が良いの?温めた方が良いの?』があります。その分かりずらいなぞに関して、当院の考え方を紹介いたします。

「捻挫や肉離れをしたら、すぐに氷で冷やす『RICE処置』」

スポーツ経験のある方なら、一度は耳にしたことがある応急処置の基本ですよね。しかし、この「常識」が今、最新の研究によって大きく見直されていることをご存知でしょうか?

実は、むやみに冷やすことが、かえって体の回復を遅らせてしまう可能性も指摘されているのです1

からだの学校、今回のテーマは「冷やすこと(寒冷療法)」と「温めること(温熱療法)」。

その本当の役割と正しい使い分けについて、最新の科学的根拠(エビデンス)に基づいて、皆さんの疑問にお答えしていきます。

1. 「冷やす(アイシング)」の新常識:目的は“治癒”ではなく“痛み止め”

長年、アイシングは炎症や腫れを抑え、治癒を早めるために良いと信じられてきました。

しかし、近年の研究で「炎症」は、壊れた組織を掃除し、修復を促すために身体に必要不可欠な反応である、ということが分かってきました2

アイシングでこの正常な炎症プロセスを過度に抑制してしまうと、治癒に必要な炎症細胞の働きが妨げられ、結果として長期的な回復が遅れる可能性があるのです3

このため、現在では急性損傷への対応として**「PEACE & LOVE」**という新しい考え方が提唱されています4。 このアプローチでは、急性期に抗炎症薬やアイシングをむやみに使うことを「避ける(Avoid)」ことが推奨されています。

では、アイシングは全く無意味なのでしょうか?

そんなことはありません。アイシングには、他の何にも代えがたい大きなメリットがあります。それは**「強力な鎮痛効果」**です。

冷却は、痛みを脳に伝える神経の働きを一時的に鈍くするため、ズキズキする強い痛みを和らげるのに非常に効果的です5

【アイシングの最新の考え方】

治癒を早めるためではなく、**「痛みが強く、活動の妨げになっている場合に、一時的な痛み止めとして限定的に使用する」**のが、現在の賢いアイシングとの付き合い方と言えるでしょう6

2. 「温める(温熱療法)」の得意分野:血流を促し、筋肉をほぐす

一方、「温めること」にはどのような効果があるのでしょうか。

温熱療法の主な目的は、血管を広げて血の巡りを良くし、硬くなった筋肉や組織を柔らかくすることです7。 これにより、新鮮な血液が修復したい組織にたくさん運ばれるようになり、慢性的な痛みやこわばりが和らぎ、関節の動きがスムーズになる効果が期待できます。

こんな症状には「温める」のがおすすめです。

  • 長引く腰痛や肩こり(血行の悪さからくる筋の不健康な状態)

  • 筋肉の慢性的な張りやこわばり

  • 運動前のウォーミングアップ(筋肉や関節の柔軟性を高める)

  • 冷えからくる身体の不調

当院が導入している**「ラジオ波温熱療法」**は、一般的なホットパックのように身体の表面から熱を加えるのとは異なり、体内の分子を振動させて、身体の奥深くで熱(ジュール熱)を発生させる仕組みです8

この「深部加温」により、マッサージなどでは届きにくい関節の奥深く(関節包)や、硬くなった筋肉の芯まで温熱効果を届けることができます⁹。これにより、関節の可動域の改善や、頑固な筋肉の緊張緩和、痛みの軽減といった効果が期待されます10

3. 【実践編】こんな時どうする?「冷やす vs 温める」使い分け早見表

 

 

まとめ:自己判断に迷ったら、専門家にご相談ください

「とりあえず冷やす」という画一的な対処法から、「痛みを抑えたいのか」「筋肉をほぐしたいのか」といった目的に応じて最適な手段を選ぶことが、早期回復への一番の近道です。

とはいえ、「この症状は急性期?それとも慢性期?」「どう対処するのがベストなの?」と判断に迷うことも多いかと思います。

そんな時は、自己判断で症状を悪化させてしまう前に、ぜひ一度、お気軽に私たち身体の専門家にご相談ください。お一人おひとりの状態を的確に評価し、最適な治療プランをご提案いたします。

【電話でのご予約・お問い合わせ】

TEL:050-3649-4281

​【Webからのご予約はこちら】

右下の予約ボタンから予約可能です。

引用学術論文一覧

 

  1. van den Bekerom MP, et al. What is the evidence for rest, ice, compression, and elevation therapy in the treatment of ankle sprains in adults? J Athl Train. 2012;47(4):435-43.

    【要約】RICE処置の科学的根拠を検証したシステマティックレビュー。アイシングが治癒を促進するという質の高いエビデンスは乏しく、主に鎮痛目的での使用が妥当である可能性を示唆している。

  2. Tidball JG. Inflammatory processes in muscle injury and repair. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2005;288(2):R345-53.

    【要約】筋肉の損傷と修復における炎症プロセスの役割を解説したレビュー論文。マクロファージなどの炎症細胞が、壊死組織の除去と再生シグナルの放出に不可欠であることを詳述している。

  3. Singh DP, et al. Effects of topical icing on inflammation, angiogenesis, coagulation and leukocyte infiltration in a human muscle-injury model. Open Orthop J. 2017;11:1-12.

    【要約】ヒトの筋肉損傷モデルにおいて、アイシングが炎症反応や血管新生(新しい血管が作られること)を抑制することを実証した研究。治癒に必要なプロセスを遅らせる可能性を示している。

  4. Vieira Ramos G, et al. Cryotherapy Reduces Inflammatory Response Without Altering Muscle Regeneration Process and Extracellular Matrix Remodeling of Rat Muscle. Sci Rep. 2016;6:18525.

    【要約】ラットの筋損傷モデルを用いた研究で、アイシングが炎症反応を抑制することを示した。この研究では筋再生自体への大きな影響は見られなかったが、炎症という重要なプロセスに介入することを示している。

  5. Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. Br J Sports Med. 2020;54(2):72-73.

    【要約】急性軟部組織損傷に対する最新の管理指針「PEACE & LOVE」を提唱した画期的な論説。身体の自然治癒力を尊重し、抗炎症薬やアイシングのルーチンな使用を避けることを推奨している。

  6. Bleakley C, McDonough S, MacAuley D. The use of ice in the treatment of acute soft-tissue injury: a systematic review of randomized controlled trials. Am J Sports Med. 2004;32(1):251-61.

    【要約】急性軟部組織損傷に対するアイシングの効果を検証したシステマティックレビュー。機能回復を早めるエビデンスは乏しいが、鎮痛効果については一貫して有効であることを結論付けている。

  7. Garra G, et al. Heat or cold packs for neck and back strain: a randomized controlled trial of efficacy. Acad Emerg Med. 2010;17(5):484-9.

    【要約】首や背中の痛みに対して、温熱療法(ホットパック)と寒冷療法(コールドパック)の効果を比較したランダム化比較試験。慢性的な筋緊張性の痛みに対しては温熱療法が有効であることを示している。

  8. Petrofsky JS, et al. The influence of therapeutic massage and heat on the thermal conductivity and blood flow in the skin. J Appl Res. 2009;9(1-2):1-10.

    【要約】温熱療法が皮膚の血流を増加させることを示した研究。血行促進が温熱療法の主要な生理学的効果の一つであることを裏付けている。

  9. Draper DO. A different look at the deep-heating effects of ultrasound and shortwave diathermy. J Athl Train. 2010;45(3):294-5.

    【要約】ラジオ波(短波)と超音波の深部加温効果について解説した文献。ラジオ波が、より広範囲で均一な深部組織の温度上昇をもたらす能力があることを説明している。

  10. Takahashi K, et al. Clinical Effect of Capacitive Electric Transfer Hyperthermia Therapy for Lumbago. J. Phys. Ther. Sci. 1999;11:45-51.

    【要約】腰痛患者に対するラジオ波温熱療法の臨床効果を調べた初期の研究。15分の施術で深部体温が3~5℃上昇し、痛みの軽減に高い効果が認められたことを報告している。

  11. Lee JH, et al. Effects of Capacitive and Resistive Electric Transfer on the successful aging of the musculoskeletal system in older adults: a randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2022;101(46):e31766.

    【要約】高齢者の慢性腰痛に対し、ラジオ波温熱療法が腰部深層の血流量を増加させ、超音波で測定した筋肉の硬さを客観的に減少させたことを示したランダム化比較試験。

  12. Lehmann JF, De Lateur BJ. Therapeutic heat. In: Therapeutic Heat and Cold. 4th ed. Williams & Wilkins; 1990:417-588.

    【要約】物理療法における温熱療法の効果をまとめた古典的な教科書。温熱がコラーゲン組織の伸展性を高め、関節可動域の改善に寄与するメカニズムについて詳述している。

  13. Lin TW, et al. Effect of Cryotherapy on Muscle Damage and Proprioception After Eccentric Exercise. J Athl Train. 2017;52(1):51-59.

    【要約】急性期の筋損傷に対するクライオセラピー(寒冷療法)の適用について論じている。一般的に受傷後24〜72時間の適用が推奨されるが、その効果については議論があることを示している。

  14. Thain P, et al. The effect of cooling on nerve conduction velocity: a systematic review. J Sports Sci. 2015;33(10):1038-54.

    【要約】冷却が神経伝導速度に与える影響をまとめたシステマティックレビュー。冷却は神経の伝導速度を著しく低下させるため、長時間の適用は一時的な感覚麻痺や運動機能低下のリスクを伴うことを示している。

  15. Malanga GA, Yan N, Stark J. Mechanisms and efficacy of heat and cold therapies for musculoskeletal injury. Postgrad Med. 2015;127(1):57-65.

    【要約】筋骨格系の損傷に対する温熱・寒冷療法のメカニズムと有効性を概説したレビュー。それぞれの療法の生理学的効果と臨床的な使い分けについて解説している。

  16. Higgins TR, et al. A Randomised Controlled Trial of the Effects of Pulsed Radiofrequency on Neuropathic Pain. Eur J Pain. 2016;20(5):746-55.

    【要約】パルス状ラジオ波(温熱を発生させないモード)が神経障害性疼痛に与える効果を調べた研究。ラジオ波が持つ多様な作用機序(神経変調作用)の一例を示している。

  17. Costantino C, et al. Short-wave diathermy therapy for musculoskeletal pain: a multicenter observational study. J Int Med Res. 2020;48(6):0300060520926312.

    【要約】筋骨格系の痛みに対する短波(ラジオ波と同様の高周波)温熱療法の効果を調べた観察研究。血流改善や筋弛緩効果を通じて、痛みを緩和する生理学的機序について言及している。

  18. Melzack R, Wall PD. Pain mechanisms: a new theory. Science. 1965;150(3699):971-9.

    【要約】痛みの「ゲートコントロールセオリー」を提唱した歴史的な論文。温かい、触るといった感覚が、痛みの信号が脳に伝わるのを脊髄レベルで抑制するという考え方は、温熱療法の鎮痛効果を説明する一助となる。

  19. Vaile J, et al. Effect of hydrotherapy on the signs and symptoms of delayed onset muscle soreness. Eur J Appl Physiol. 2008;102(4):447-55.

    【要約】運動後の筋肉痛に対するハイドロセラピー(水治療法)の効果をレビューした研究。温冷交代浴が筋肉痛の軽減に有効である可能性を示唆している。

  20. Knight K. Cryotherapy in sport injury management. Human Kinetics, 1995.

    【要約】スポーツ傷害管理における寒冷療法に関する古典的な専門書。アイシングの生理学的効果や具体的な適用方法について網羅的に解説しており、長年にわたり臨床の基礎とされてきた。

※ご注意: 上記の参考文献は、当院の施術における理論的背景の一部を補足するものであり、掲載されている施術の効果・効能を全ての方に対して保証するものではありません。

久保田接骨院のロゴ

【根本改善】肩、首、腰の痛み|久保田接骨院(西区)

bottom of page