
~肩、首、腰の接骨院~
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【接骨院のエコー】長引く痛みの原因、見てみませんか?超音波で筋肉や関節の状態を詳しく解説
接骨院の「眼」、超音波(エコー)観察ってなんだろう?
はじめに
「痛みの原因はどこにあるんだろう?」「自分のからだの中はどうなっているの?」
接骨院に来られる患者さんの多くが、このような疑問をお持ちです。私たちは、患者さんのお話を丁寧に伺い、お体に触れて状態を把握する「触察」をとても大切にしています。それに加えて、より詳しく、そして客観的にお体の状態を把握するために活用しているのが超音波画像観察装置(エコー)です。
レントゲンが骨の状態を把握するのに優れているのに対し、エコーは筋肉や腱、靭帯といった軟部組織の状態をリアルタイムで観察することを得意としています。このページでは、接骨院の「もう一つの眼」ともいえるエコーについて、分かりやすく解説します。
超音波(エコー)ってなあに?
エコーは、人間の耳には聞こえない高い周波数の音波(超音波)を利用した観察装置です。
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仕組みは?
プローブと呼ばれる装置をお体に当て、そこから超音波を発信します。体内の組織に当たって跳ね返ってきた音波を、再びプローブが受信し、その情報をコンピューターが画像に変換してモニターに映し出します。魚群探知機が音波で魚の群れを見つけるのと似た原理です。
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安全性は?
エコーは放射線を使用しないため、被ばくの心配は全くありません。産婦人科で赤ちゃんの様子を見るために使われていることからも、その安全性の高さが分かります。小さなお子様からご高齢の方まで、どなたでも安心して受けていただくことができます。
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どんな特徴があるの?
エコーの最大の強みは、筋肉や関節を動かしながらリアルタイムで観察できることです。「この動きで痛い」という、まさにその瞬間の筋肉や腱の状態を捉えることができます。
エコーで何がみえるの?
エコーは、骨、筋肉、腱、靭帯など、運動器の様々な組織を映し出すことができます。ここでは、当院にある実際の画像を使って、何が観察できるのかをご紹介します。
1. 骨の表面の状態(骨折やヒビの観察)
レントゲンでは分かりにくい、肋骨や指などの微細な骨折や骨の表面の不整を観察するのに非常に有用です。特に、ぶつけた直後で腫れが強い場合でも、その場で状態を把握することができます。
【症例画像:肋骨骨折】
画像解説:これは肋骨を骨折した方のエコー画像です。骨の表面が段差のように途切れている様子が分かります。柔道整復師はこのような所見を基に、骨折の疑いがあると判断し、適切な固定処置や専門医への受診勧奨を行います。

2. 筋肉・腱・靭帯の損傷
肉離れ(筋損傷)や腱・靭帯の損傷は、スポーツや日常生活で頻繁に起こるケガです。エコーを使うと、筋肉の線維がどの程度傷ついているのか、腱や靭帯が伸びたり切れたりしていないかを詳細に観察できます。
【症例画像:アキレス腱炎】
画像解説:これはアキレス腱炎の方のエコー画像です。かかとの骨に付着する部分の腱が腫れて厚くなり、黒く抜けて見える部分に炎症や微細な損傷があることが推測されます。どこに問題があるのかを正確に把握することで、より効果的な施術やセルフケア指導が可能になります。
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3. 炎症の有無と程度
「痛み」の大きな原因の一つに「炎症」があります。炎症が起きている場所では、新しく血管が作られ、血流が増加することが分かっています。エコーの
ドップラー機能を使うと、この血流の増加を色で表示することができ、炎症の有無や程度を視覚的に捉えることができます。
【症例画像:肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)】
画像解説:いわゆる四十肩・五十肩で、夜も眠れないほどの強い痛みを訴えていた方のエコー画像です。棘上筋という筋肉の腱の周りに、ドップラー(色の付いた部分)が反応しています。これは、この部分に強い炎症が起きていることを示唆しており、痛みの原因がどこにあるのかを特定する上で非常に重要な情報となります。

4.癒着の有無と程度
ケガや手術の後、あるいは長期間関節を動かさないでいると、筋肉や脂肪といった本来はスムーズに滑り合うべき組織同士がくっついてしまう「癒着(ゆちゃく)」が起こることがあります。この癒着は、関節の動く範囲を狭めたり、動かした時の痛みの直接的な原因になったりします。
エコーの大きな利点は、関節を実際に動かしながら組織の「滑り」をリアルタイムで観察できることです。これにより、癒着が「あるかないか(有無)」、そして「どのくらい動きを妨げているか(程度)」を視覚的に把握することが可能になります。
【症例動画:膝蓋上嚢の癒着】 動画解説:これは膝の曲げ伸ばしが困難になった方のエコー動画です。膝を曲げる際に、本来であれば太ももの骨の上を滑るべき組織(膝蓋上嚢や脂肪体)が癒着によって動かなくなっている様子が分かります。この状態を直接観察することで、動きの悪さや痛みの原因を正確に把握し、癒着を剥がすための的確な施術につなげることができます。

膝蓋上嚢が癒着している状態
膝蓋上嚢の癒着がはがれた状態

まとめ:安全で的確な施術のために
私たち柔道整復師がエコーを使用する目的は、医師のように病名を診断することではありません。あくまで、患者さんのお体の状態を正確に把握し、より安全で効果的な施術を行うためです。
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痛みの原因を的確に把握
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画像を見ながら分かりやすくご説明
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施術による状態の変化を確認
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重篤なケガを見逃さず、速やかに専門医へ
エコーを用いることで、私たちは患者さん一人ひとりのお体の状態に合わせた、最適な施術プランをご提案することができます。ご自身の痛みの原因について詳しく知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
引用文献一覧
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Nazarian LN. The top 10 reasons musculoskeletal sonography is an important complementary or alternative technique to MRI. AJR Am J Roentgenol. 2008;190(6):1621-1626.
【要約】筋骨格エコーが、MRIと比較してリアルタイムでの観察(動的検査)が可能である点など、多くの利点を持つ重要な検査法であることを解説した論文です。
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Bianchi S, Martinoli C. Ultrasound of the Musculoskeletal System. Springer; 2007.
【要約】筋骨格系の超音波検査に関する標準的な教科書であり、検査の原理や各部位の正常・異常な画像所見について網羅的に解説しています。
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Abramowicz JS, Fowlkes JB, Stratmeyer ME, Ziskin MC. Bioeffects and safety of prenatal ultrasound. J Ultrasound Med. 2016;35(12):2515-2537.
【要約】産科領域における超音波の安全性を検証した論文で、診断に用いられるレベルの超音波は放射線を含まず、生物学的な悪影響がないことを示しています。
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Hurley ME, Keye GD, Hamilton S. Is ultrasound really better than conventional radiography in detecting rib fractures? A systematic review and meta-analysis. Emerg Med J. 2014;31(9):767-771.
【要約】肋骨骨折の発見において、超音波検査がレントゲン検査よりも高い精度を持つことを、複数の研究結果を統合して(メタアナリシス)結論付けた研究報告です。
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Kainberger F, Mittermayr R, De Zordo T, et al. The role of ultrasound in rheumatic diseases. Ther Umsch. 2012;69(4):217-224.
【要約】関節リウマチなどの疾患において、エコーが腱や関節内の炎症を評価する上で重要な役割を果たすことを示した論文です。
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Wakefield RJ, Brown AK, O'Connor PJ, Emery P. Power Doppler sonography: improving disease activity assessment in inflammatory musculoskeletal disease. Arthritis Rheum. 2003;48(2):285-288.
【要約】エコーのパワードップラー機能を用いることで、炎症部位の血流増加を捉えることができ、疾患の活動性をより正確に評価できることを示した研究です。
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Draghi F, Gitto S, Bortolotto C, et al. Dynamic sonography of the knee. J Ultrasound. 2017;20(3):171-185.
【要約】膝関節を動かしながら行う「動的エコー検査」の有用性について解説した論文。特に関節内の組織の滑りや癒着の評価に優れていることを示しています。