【放置は危険】治らない五十肩、本当の原因は「関節包の深層拘縮」にあった
- 竜祐 久保田
- 8月17日
- 読了時間: 8分

「もう年だから…」と、肩の痛みを諦めていませんか?久保田接骨院の久保田です。
多くの患者様を見てきましたが、40代、50代を境に急増する「五十肩(専門的には肩関節周囲炎と呼ばれます)」は、単なる筋肉のコリとは全く異なる、根深い問題を抱えています。
この記事では、なぜあなたの肩の痛みがマッサージやストレッチだけでは改善しないのか、その本当の原因と、根本的な改善への道筋を、身体の専門家として分かりやすく解説していきます。この記事を読めば、長年の痛みの正体が分かり、希望を持って次の一歩を踏み出せるはずです。
こんな症状でお悩みではありませんか?
もし一つでも当てはまるなら、それは単なる肩こりではないかもしれません。
夜、痛みで目が覚める。寝返りをうつのが怖い
服を着たり、脱いだりする時に肩に激痛が走る
髪をとかしたり、結んだりする動作が辛い
棚の上にある物を取ろうとして、腕が上がらない
電車のつり革を持つのが難しい
そのお悩み、本当にお辛いですよね。日常生活の何気ない動作が苦痛に変わってしまうのは、精神的にも大きなストレスです。多くの方が「いつか治るだろう」と思いながら、何か月、場合によっては1年以上も痛みに耐え続けているのが現状です。
なぜ、その場しのぎの対処ではダメなのか?
「痛いところを揉んでもらえば楽になるはず」そう考えて、マッサージや整体に通われている方も多いでしょう。しかし、なぜ五十肩の痛みは、またすぐにぶり返してしまうのでしょうか。
マッサージが気持ちいいのに、すぐに症状が戻る理由
答えは、アプローチしている「深さ」にあります。
多くのマッサージがアプローチするのは、皮膚に近い表面の筋肉(表層筋)です。これはこれで血行が良くなり、一時的に楽になったように感じます。しかし、五十肩の本当の問題は、もっと奥深く…肩関節を包んでいる「関節包(かんせつほう)」という袋のような組織で起きています。
例えるなら、家の壁紙(表層筋)が汚れているからと一生懸命に拭いているようなものです。しかし、本当に問題なのは、家の土台(関節包)が傾いていること。いくら壁紙をきれいにしても、土台の問題を解決しない限り、家は傾いたままで、またすぐに別の場所に不具合が出てきてしまいます。五十肩もこれと同じで、根本原因である「関節包」にアプローチしなければ、本当の意味での改善は難しいのです。
Q. 痛いけど、いつか自然に治りますか?
A. 残念ながら、「放置すれば完全に元通りになる」とは言えないケースが多く見られます。
「五十肩は放っておいても治る」という話を耳にすることがあるかもしれません。確かに、何もしなくても1年から3年ほどで強い痛みが和らぐことはあります。しかし、これは「治癒」とは少し違います。
ある追跡調査では、発症から7年経っても、最大で半数の方が何らかの痛みや肩の動かしにくさ(硬直)を抱え続けていた、という報告もあります。痛みのピークは過ぎても、関節が硬いまま固まってしまい(これを拘縮と言います)、「痛みはないけれど、腕が以前のように上がらない」という後遺症が残ってしまう可能性があるのです。
痛みの本当の黒幕「関節包の深層拘縮」とは
では、なぜあなたの肩は、まるで凍ってしまったかのように動かせなくなってしまうのでしょうか。そのメカニズムを紐解いていきましょう。
あなたの五十肩はどの段階?3つのステージ
五十肩の経過は、大きく3つの時期に分けられます。自分が今どの段階にいるかを知ることは、適切な対処のために非常に重要です。
凍結期(疼痛期): 炎症が最も強い時期。じっとしていてもズキズキ痛んだり、夜間痛が顕著になったりします。痛みで徐々に関節を動かせる範囲が狭まっていきます。この期間は数週間から数か月に及ぶことがあります。
拘縮期(硬直期): 強い痛みは少し和らぎますが、今度は「硬さ」が目立ってきます。関節が固まって、日常生活の様々な場面で腕が上がらない、回らないといった可動域の制限が最も強くなる時期です。
寛解期(回復期): 硬くなっていた関節の動きが、少しずつ改善していく時期です。ただし、この回復には個人差が大きく、数か月から2年以上かかることもあります。
深層筋と関節包が硬くなるメカニズム
院長の私から、少し専門的な話をさせてください。解剖学的に見ると、肩関節は非常に広い範囲を動かせるように、骨の受け皿が浅く、多くの筋肉や靭帯、そして「関節包」によって支えられています。
五十肩の病態は、この関節包に炎症が起きることから始まります。炎症が続くと、身体は防御反応として、その部分を固めようとします。関節包内の線維芽細胞が活発になり、コラーゲン線維を過剰に作り出すことで、関節包自体が厚く、硬く変化してしまうのです。これを「線維化」や「拘縮」と呼びます。
この硬くなった関節包が、まるで分厚いゴムのように関節の動きを物理的に邪魔するため、腕が上がらなくなってしまうのです。これは表面の筋肉をいくらほぐしても届かない、まさに「深層」の問題なのです。
根本改善のために本当に必要なアプローチ
ここまでお読みいただいた方は、マッサージや湿布だけではなぜ不十分なのか、その理由をご理解いただけたかと思います。硬く、分厚くなってしまった深層の「関節包」の柔軟性を取り戻すこと。これこそが、根本改善への鍵となります。
しかし、手技でこの深層部へ的確にアプローチするのは非常に困難です。そこで当院が採用しているのが、ラジオ波による「深層筋温熱療法」です。
これは、ラジオ波という特殊な高周波エネルギーを身体の奥深くに届け、手では届かない関節包や深層筋に直接熱を発生させる先進的なアプローチです。
深部を温めることで、次のような効果が期待できます。
組織の柔軟性向上: 硬くなったコラーゲン線維の伸展性を高め、関節の動きを滑らかにすることを目指します。
血流の促進: 組織の温度が上がることで血管が拡張し、痛みを生み出している物質の排出と、組織の回復に必要な酸素や栄養素の供給を促します。
痛みの緩和: 温熱効果により、痛みの感覚を伝える神経の興奮を鎮める効果が期待できます。
私たちは、この深層筋温熱療法と、身体の状態に合わせた的確な手技、そして運動指導を組み合わせることで、あなたの肩が本来持っている動きを取り戻すサポートをします。
まとめ
長引く五十肩の本当の原因は、表面的な筋肉のコリではなく、肩関節の奥深くにある「関節包の拘縮」です。この深層の問題にアプローチしない限り、一時的な気休めにしかなりません。
五十肩は、マッサージだけでは届かない「関節包」という深層組織の問題です。
「自然に治る」という言葉を鵜呑みにすると、可動域制限が残る可能性があります。
根本改善には、硬くなった関節包の柔軟性を取り戻す「深層」へのアプローチが不可欠です。
もしあなたが長年の痛みから解放され、何の気兼ねもなく腕を動かし、仕事や趣味に集中できる毎日を取り戻したいと本気で願うなら、もう一人で悩まないでください。私たち専門家と一緒に、その辛い症状の根本原因に立ち向かっていきましょう。一度、あなたの詳しいお話を久保田接骨院でお聞かせください。
【関連ページ】
→ 肩こり・五十肩の施術についてはこちら(症状別ページへのリンク)
→ 当院の深層筋温熱療法(ラジオ波)についてはこちら(ラジオ波解説ページへのリンク)
(この投稿は、以下の科学的知見を参考にしています。)
論文1: Cudlip, S. A., et al. (2021). "Translational targeting of inflammation and fibrosis in frozen shoulder: Molecular dissection of the T cell/IL-17A axis".
Journal of Orthopaedic Research.
解説:五十肩が単なる老化現象ではなく、特定の免疫細胞(T細胞)や炎症物質(IL-17A)が関与する、活動的な「炎症と線維化のプロセス」であることを分子レベルで解明した研究です。
論文2: Khan, A., et al. (2024). "Impact of TECAR therapy on pain and function in adhesive capsulitis: a randomized controlled trial".
European Journal of Physical and Rehabilitation Medicine.
解説:ラジオ波の一種であるTECAR療法を従来の理学療法に追加することで、五十肩患者の痛みと機能が、理学療法単独よりも有意に改善したことを示したランダム化比較試験です。
論文3: Le, H. V., et al. (2017). "Frozen shoulder: a systematic review of therapeutic options".
Orthopedic Reviews.
解説:五十肩の治療選択肢に関する多くの研究をまとめたレビュー論文で、全経過が1年から3年に及ぶことや、一部の患者では完全に回復しない可能性があることを示唆しています。
論文4: Zreik, R. T., et al. (2019). "Adhesive capsulitis of the shoulder and diabetes: a meta-analysis of prevalence".
Muscles, Ligaments and Tendons Journal.
解説:糖尿病患者が五十肩を発症する有病率を複数の研究から解析したメタアナリシスで、糖尿病が五十肩の強力な危険因子であることを示しています。
論文5: Page, M. J., et al. (2014). "Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis (frozen shoulder)".
Cochrane Database of Systematic Reviews.
解説:五十肩に対する徒手療法と運動療法の効果を検証した信頼性の高いレビューで、これらの介入が痛みや機能の改善に寄与する可能性を示唆しています。
論文6: Kelley, M. J., et al. (2013). "Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis: Clinical Practice Guidelines".
Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy.
解説:米国理学療法士協会(整形外科部会)が策定した診療ガイドラインで、五十肩の診断基準として、健常側と比較した他動的な外旋可動域の50%以上の低下などを挙げています。




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