繰り返すその不調、原因は「満杯のコップの水」でした。
- 竜祐 久保田
- 9月4日
- 読了時間: 6分

【なぜ?】施術直後は楽なのに…痛みがぶり返す本当の理由
このような症状でお悩みではありませんか?
しっかり休んだはずなのに、朝起きた瞬間から身体が重く痛い…
施術を受けた直後はスッキリするのに、数日経つと元に戻ってしまう…
「もうこの痛みと付き合っていくしかないのかも」と諦めかけている…
そのお悩み、本当にお辛いですよね。多くの方が「なぜ私の痛みは繰り返すのだろう?」と、同じように悩んでいます。
この記事では、長年痛みに苦しむあなたのために、なぜ痛みが"ぶり返す"のか、その根本的なメカニズムを、専門家の視点から分かりやすく解説します。読み終える頃には、ご自身の身体で何が起きているのかを理解し、希望を持って次の一歩を踏み出せるはずです。
なぜ、その場しのぎの対処ではダメなのか?
多くの方が、痛みを感じるとマッサージを受けたり、湿布を貼ったりします。もちろん、それらで一時的に楽になることは素晴らしいことです。しかし、なぜ効果が長続きしないのでしょうか。
その答えは、私たちの心と身体にある「見えないコップ」で説明できます。
あなたの痛みは「コップの水」で説明できます
私たちの心と身体を、一つの「コップ」だと想像してみてください。
蛇口から注がれる水 = 日々の負担(ストレス、睡眠不足、悪い姿勢など)
コップから抜ける水 = 回復する力(睡眠、栄養、適度な運動、施術など)
コップから水が溢れた状態 = 「痛み」という症状の発生
(※ここにコップから水が溢れているイラストを挿入するイメージです)
施術を受けることは、一時的にコップの水を汲み出す、非常に有効な「修復」活動です。しかし、蛇口から注がれる水の勢いが強すぎたり、水を抜く力が弱まっていたりすると、コップはすぐに満杯になり、再び水が溢れ(=痛みがぶり返し)てしまうのです。
蛇口から注がれる水の正体:「アロスタティック負荷」とは?
コップに水を注ぎ続ける「日々の負担」。これを科学の世界では「アロスタティック負荷」と呼びます。
これは、精神的なストレス、睡眠不足、栄養の偏り、長時間のデスクワークといった様々なストレス要因に対し、身体が必死に適応しようと頑張り続けた結果、心身が疲弊してしまった状態を指します。
多くの患者様を見てきましたが、痛みが慢性化している方のほとんどは、このアロスタティック負荷が高い状態にあります。つまり、自分でも気づかないうちに、蛇口が開きっぱなしになっているのです。
Q. 湿布や痛み止めを使い続けるとどうなりますか?
A. あくまで感覚を麻痺させているだけで、根本原因は進行している可能性があります。
湿布や痛み止めは、溢れた水を一時的に拭き取ったり、水が溢れていることに気づかないようにしたりするようなものです。蛇口から水が注がれ続けているという根本的な問題は解決されていません。そのため、水面下ではコップが劣化し、さらに深刻な問題へと繋がっていく危険性があります。
痛みの本当の黒幕「満杯の水が引き起こす神経の誤作動」
コップから水が溢れ続けると、もっと厄介なことが起こります。身体の「警報システム」である神経そのものが、過敏になってしまうのです。これを専門的には「中枢性感作(ちゅうすいせいかんさ)」と呼びます。
火災報知器が鳴りっぱなし?「中枢性感作」のメカニズム
中枢性感作とは、痛みが長期間続いた結果、脳や脊髄といった神経の中枢が、いわば**「火災報知器が誤作動を起こし、煙がないのに常に警報が鳴り響いている状態」**になってしまうことです。
解剖学的に見ると、痛みの信号が繰り返し神経に送られることで、神経細胞が常に興奮状態となり、ささいな刺激にも「痛い!」と過剰に反応するようになります。この状態になると、もはや痛みは身体の特定の部分だけの問題ではなく、神経システム全体の機能異常として捉える必要があります。
もしかして…?神経が疲弊している3つのサイン
もし、以下のような感覚に心当たりがあれば、それは神経が疲弊しているサインかもしれません。
痛覚過敏 (Hyperalgesia)
軽くぶつけただけなのに、耐えがたいほどの激痛を感じる。
アロディニア (Allodynia)
服が肌にこすれる、風が当たるなど、本来は痛くない刺激が痛みに感じる。
痛みの拡大
痛みが最初の場所を越えて、関係ない場所にまで広がっている。
「昔より痛みに敏感になった気がする」と感じるなら、それは単なる気のせいではないかもしれません。
根本改善のために本当に必要なアプローチ
絶望する必要はありません。大切なのは、蛇口を完全に閉めることではなく、「修復(水を抜く量)」が「消耗(注がれる量)」を少しでも上回る日を一日でも多く作ることです。
久保田接骨院では、なぜあなたのコップの水が溢れてしまっているのか、その根本原因に目を向け、二つの側面からアプローチします。
「蛇口を少し締める」お手伝い
カウンセリングを通じて、あなたの生活習慣や身体のクセに隠れた「消耗」の原因を一緒に見つけ出し、改善のためのアドバイスを行います。
「コップの水を積極的に抜く」お手伝い
通常の手技では届かない、身体の奥深くにある筋肉(深層筋)の緊張は、コップの水を抜けにくくする大きな原因の一つです。当院では、この深層筋に直接アプローチできる「深層筋温熱療法(ラジオ波施術)」を導入しています。
深層筋温熱療法は、身体の深部で熱を発生させ、ガチガチに固まった筋肉や組織の柔軟性を取り戻し、血流を促進させます。この心地よい温熱刺激は、過敏になった神経の興奮を鎮め、痛みの信号が脳へ伝わるのをブロックする効果(ゲートコントロール理論)も期待できます。
まとめ
施術を受けても痛みがぶり返してしまうのは、あなたの心と身体の「コップ」から水が溢れ続けているサインです。
消耗(ストレスなど)が修復(回復力)を上回っている
長引く痛みで、神経の警報システムが誤作動を起こしている
もしあなたが長年の痛みから解放され、仕事や趣味に集中できる毎日を取り戻したいと本気で願うなら、諦める前に一度、当院にご相談ください。あなたの「コップ」の状態を一緒に確認し、水が溢れない健やかな毎日を目指しましょう。
【関連ページ】
(この投稿は、以下の科学的知見を参考にしています。)
Melzack R, Wall PD. (1965). "Pain mechanisms: a new theory". Science.
(解説:痛みが脳に伝わるのを脊髄レベルでブロックできるという「ゲートコントロール理論」を提唱した画期的な論文です。)
Latremoliere A, Woolf CJ. (2009). "Central sensitization: a generator of pain hypersensitivity by central neural plasticity". The Journal of Pain.
(解説:痛みが慢性化する原因である「中枢性感作」の神経メカニズムについて詳細に解説しています。)
Guidi J, et al. (2020). "Allostatic Load and Its Impact on Health: A Systematic Review". Psychotherapy and Psychosomatics.
(解説:心身のストレスが積み重なった状態である「アロスタティック負荷」が、健康にどのような影響を与えるかをまとめた研究です。)
Liang Y, et al. (2024). "Allostatic load and chronic pain: a prospective finding from the national survey of midlife development in the United States, 2004-2014". Pain.
(解説:アロスタティック負荷が高い人ほど、将来的に慢性痛を発症するリスクが高いことを示した大規模な追跡調査です。)
Takahashi K, et al. (1999). "Clinical Effect of Capacitive Electric Transfer Hyperthermia Therapy for Lumbago". Journal of Physical Therapy Science.
(解説:ラジオ波を用いた温熱療法が、腰痛の改善に効果的であることを示した臨床研究です。)




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